2014.02.11
2013年12月のFREESTYLE SESSION WORLD FINALSで来日し、その後約3週間にわたって日本ツアーを行ったDJ Skeme Richards。Rock Steady Crewのメンバーとして、80年代から現在まで、HIP-HOPカルチャーの最前線ともっとも根深い部分をつなぐ、とても重要な存在です。
今回は来日に合わせて、ショートインタビューを実施。「音楽」という視点から純粋な目を向けるSkemeの言葉からは、たくさんの納得が生まれるはずです。是非、読んでみてくださいね。では、CHECK!
===
-今日は時間を取ってくれてありがとう。今回も日本ツアーを楽しんでいるみたいで、すごく嬉しいです。今日は色んなことをフリースタイルで聞いていきたいと思うけど、いきなり大事な質問からさせて下さい。SKEMEが思う理想のシーンと、今現在のシーンのギャップについて、話してくれますか。
そうだねぇ、大きな隔たりがあるよ(笑)。みんな大会とかに集中しすぎて、音楽を「hear:聞こえる」はしているけれども、「listen:聴く」ということはしていないように思うね。みんな練習してきたことをやるのに精一杯で、ダンスをしているとは言えないんじゃないかなと思う。
BBOYは昔は、クラブに通うキッズだったんだけど、今のBBOYたちはクラブには通わないよね。まぁ音楽が好きじゃないんじゃないかなぁ(笑)。練習でも同じ曲を繰り返しかけて、DJも居なくて、サプライズがない環境に慣れすぎているね。それが大きなギャップかな。
今はBBOYに限らず、クラブに行く人も、DJが誰かとか気にしない人が多いね。知っている曲やTOP40が流れれば、それでよしとしてしまう。誰が音楽を届けるのか、本当は気にするべきなんだけどね(笑)。
-シーンの皆にはちょっと意地悪な質問だけど、例えばJames Brownの”Get Loose”というワードの理解は、Skemeはどう捉えていますか。
う〜ん、理解している人は少ないと思うね。もともと音楽自体、人々を”Get Loose”させるためにつくられているものなんだ。僕の解釈では、”Get Loose”ということは、”Natural”ということだね。自然に、音楽に身を委ねるということさ。
多くのダンスが自由になりきれないのは、最近はBBOY JAMのDJたちもドラム主体の音楽が多めで、ちょっとソウルに欠けるところがあるから、そういう影響もあると思う。踊っているといっても、「テンポ」だけだね。もっとグルーヴを捕らえるべきだ。ちょっと悲しいな、と思うよ。音楽がすべてさ。
-最近は”Cypher”という言葉も良く用いられていて、コンペティションの方式としてもそう呼ばれたりするけど、歴史を通ってきたSkemeとしてはどう感じていますか。
あれは”Cypher”じゃなくて、”Cypher Style”(サイファー形式)と呼ぶべきだろうね。Cypherという言葉が、Terminology(用語)になってしまっている。すこしズレた定義を伴ってね。たとえばbreakin’を踊れる=bboyではないとも思うんだ。さっき言ったような、クラブとかパーティの要素が抜け落ちているよね。最近はそういう用語のひとり歩きが多いなって感じるよ。
Cypher Jamなんて、80年代にはなかったね。ただ普通にクラブに行って、踊って、飲んで、女の子としゃべる。ダンスするだけだね。自然に、会話のように。そういう意味のはずであって、「踊らなければならない」ということじゃないんだ。これは質の問題で、誰がハングリーに踊れるか?なんていうことではないね。のんびり気楽に踊りたい人が入れない空間なら、Cypherとは呼べないと思う。
-こういうシチュエーションは世界中色々なところで見受けられるものなのですか?
そうだね、世界中のどこでも似ているよ。”each one teach one”みたいな言葉もひとり歩きしているように思うね。本当に大切なことは、サムライやカンフーのように、その本当の弟子にだけ色濃く受け継がれるものだと思うよ。あちこちから拾ってくるものじゃないと思う。
知識は時間であって、理解の時間なんだ。20年前に言われたことに、ふと気づくんだ。それが大切さ。
DJだってそうだね。Break DJと呼ばれる人たち。SERATOやMP3を使うけど、レコードの回し方も知らない。エモーションがないんだ。そのレコード1枚がどれだけクラウドを動かせるかを知っているか?ということだね。
最近のBreak DJは、Hype(盛り上がる)だと思うものを流しているだけだね。Hypeはあくまで、たくさんある感情のうちの一つにすぎないんだ。音楽には他にも、たくさんの感情、アップダウン、異なるテンポ、異なるバイブスがあるんだ。
-確かにこのコンペティション全盛の時代では、「SLOW」とか「LOW」なエモーションをみんなあまり大切にしていないように思えますね。
遅い曲でも同じ動きしているからね。fast(速い)は、hide(隠蔽)だ。DJが恐れているのさ。次の仕事が無くなることに恐れているんだよ(笑)。例えば15分あったら、アップダウンがあって当然さ。人々を音楽と一緒に旅へ連れていくのがDJなんだ。
かつてのDJは、シグネチャーソングをみんな持っていた。みんなが知らないけど、そのDJの代名詞となる曲だね。BBOYもそうあるといいね。Yellow SunshineならFocus(Flo Mo Crew)。Just BegunならYnot(Rock Steady Crew)といった感じにね。
-濃いメッセージの数々をありがとうございます。最後に、このカルチャーに関わるみなさんへ、ひとこと頂けますか。
今、たくさんのJAMや大会があるのは、とてもいいことだと思う。それだけ関わる人が多いということだからね。その一方で、勝ったことがない子たちがとっても多いのも現実だ。だからこそ、カルチャーでつながっていないといけないと思うんだ。多くの人が、勝てないという理由で辞めてしまうのが、すごく悲しいよ。ダンスが好きで音楽が好きなら、終わらないはずだからね。間違った動機で始まったあらゆるものは、必ず終わりを告げてしまうんだ。
このカルチャーは、音楽からすべてが始まったんだ。みんな、楽しんで、踊り続けて欲しいと思う。また日本のみんなに会えるのを、楽しみにしているよ!
===
Hot Peas and Butta
http://hotpeasandbutta.com/
===