2016.01.23
去る11月24日、Red Bull Studios Tokyoにて開催された「新時代のTOKYOストリート・サミット」、ARTIPENDENT Vol.2。先日アップされた一日目のレポートに引き続き、二日目のレポートをお届け。
Vol.2の二日目は、「ストリートカルチャーとまちづくりの可能性~BMX×小松市をモデルに〜」をテーマにしたトークセッション。BMXを通じて石川県小松市と積極的な活動を行ってきた宇野 “YORK” 陽介さんと、一日目に引き続きアーツカウンシル東京からプロジェクトディレクターの森司さんをゲストに迎え、約30名のカルチャー関係者やプレイヤーが参加。参加者とゲストのあいだで沢山のヒントとキーワードが飛び交う、お二人らしい熱いセッションになりました。
これでも、トークセッションのごく一部分のご紹介です。実際の内容はもっともっと濃厚!今回ご参加されなかった方は、次回ぜひ会場に足を運んでみてくださいね。
宇野陽介×BMX×石川県小松市
小林(RAW SKOOL):本日はYORKさんに、小松市や全国各地で行っている活動のお話やその思いをお話し頂き、森さんからもアートの観点や行政的視点もふまえたご意見を頂戴しながら、会場と対話形式で進めさせて頂きます。早速ですがYORKさん、小松市での活動について教えてください。
YORK:小松市では市から協力を頂き、小松駅前の公園広場でBMXをすることを認めてもらいました。平日・週末に関わらず、たくさんのBMXライダーがいて、BMXの聖地のようになっています。またBMXのスクールを開講し、次世代の為の居場所作りもしています。そして、ライダーが挑戦出来る機会として、「全日本BMXフラットランド大会 C3 JAM」を開催しています。この大会は、富山・大阪・静岡・名古屋で予選を行い、決勝大会を小松市で行う全国大会です。小松市長にもご挨拶を頂き、とても盛り上がりました。
会場:開催するにあたり、小松市とはどの様な進め方で、どの業務を行っている部署とお話をしたのでしょうか。
YORK:初めは、知り合いもいませんし、飛び込みでしたね(笑)。公共の場所を利用するにあたっては、市の公園緑地課へ話しに行きました。公園緑地課という部署が市の公共の場所を管理しているからです。内容は、自分達がやりたいことの他に、この大会を開くことによって小松市に起こる経済の変化、例えば空港の利用率が上がることや、駅周辺の半径5kmにある温泉宿の宿泊率もレポートとして提出しました。
最近、神戸であったBMXフラットランドの世界大会にも関わりましたが、それも公共の場所で開催しました。公共の屋外施設は、安く借りられるのがメリットですね。一般の人の目にも入りやすいですし、地域の商店街などがとても協力的にサポートしてくれます。
個人的な意見ですけど、「まちと一緒になって、利益を目的とせず、多くの場所を作っていく」ということが、僕の考える「BMXカルチャー」にしっくり来ますね。
「隣の芝生を青く見ていてもしょうがない」(森さん)
小林:小松市はとても協力的で上手くいった例のひとつですが、多くのプロジェクトを展開するアーツカウンシル東京が関わるプロジェクトの中で、地域に密着して上手くいったプロジェクト等があれば、森さん、教えて下さいますか。
森(アーツカウンシル東京):一例ですが、中央線沿いの高円寺から国分寺エリアにかけて行われている「TERATOTERA」は、地域に密着したアートプロジェクトです。7〜8年くらい続けています。その間に少し、実施する地域を広げはしましたが、基本的には無理に拡大しないように心がけています。このプロジェクトは、マスメディアを意識した大きなイベントではなくて、自分達のスタッフの数でオペレーションをしやすい規模、つまり全体のマネジメントが行き渡る規模を理解しつつ、継続的に行うことに重きを置いています。
プロジェクトを行う上で、みなさんがやりたいことの「規模感」を把握することって、とても重要なんです。例えば、むやみに億単位のお金があってもしょうがないと思うんです。100万円が必要なのか、小さな活動だったら20〜30万円くらいというのも多い。その規模感をしっかり把握して共有することが重要です。自分達で出来る規模で、数を打っていく。
小林:お二人にお聞きしますが、YORKさんであればBMXに出来て、BMXに出来なかったこと。森さんであれば、芸術文化に出来て、芸術文化に出来なかったことがあれば、それぞれ教えて下さい。
YORK:う〜ん、特に意識したことは無いですね(笑)。僕のプロモーションビデオ(※上の動画)を勝山のお寺で撮ったんですけど、最初は宗教とBMXって交わる所が無いので許可してもらえないんじゃないかと思っていました。でも、シンプルに自分が表現をしたいことをお話しすると、意外とすんなり理解してもらえましたね。何をやっているかではなくて、とにかく自分のやりたいことをやってみる。チャレンジが大事だと思います。
森:その通りですね(笑)。YORKさんは、自分がやりたい事が明確で、他を見て羨ましがっていないんですよね。これはとても大事なことだと思います。隣の芝を青く見ていてもしょうがないんです。自分のやりたい事が明確で、ちゃんと自分の世界も持っている。こういう方は、一緒に何かに関わる時に、とても信用出来て、一緒にやっていけるんです。実際に私達(アーツカウンシル東京)や行政が関わる際には、これがとても大事だと思います。
小林:東京と地方というのも、また違う問題を抱えていると思いますが、行政とストリートの関わり方のヒントはありますか。
森:地方行政は、皆さんが思っている以上に話題を探しているように思います。基礎自治体は住民にサービスを提供することが仕事なので、サービスを作らなければいけませんからね。都道府県や国のレイヤーになると難しいことも出てきますが、基礎自治体には積極的にアプローチしても良いのではないでしょうか。
YORK:東京では難しいかもしれませんが、例えば富山市にはNIXS(NIXSスポーツアカデミー)という日本最大級のストリートスポーツ複合施設があります。富山市が約9億円をかけて造りました。色々なメンバーが集まって、富山市のアクティブスポーツ協会という組織をまず結成して、彼らが署名を集めて市に提出しました。ストリートが行政を動かしたとても素晴らしい例の1つだと思います。
「次世代につなげること、コミュニティをつくること」(YORKさん)
小林:YORKさんにとって、ストリートカルチャーの今後のビジョンはどのようなものですか。
YORK:イベントに参加するのも運営するのも楽しくて大事ですけど、僕はこのストリートカルチャーをどう次世代に繋げるかをすごく考えています。僕自身、BMXを続けていて、とても悩んだ時期がありました。同じまちのライダーより上手くなって、日本一になって、世界一になると、その先には何があるんだろうって、すごく悩みました。いまの僕は、「次世代に伝えていく事」がモチベーション。僕は運良くプロライダーとして、あるいはARESBIKESの一員として、BMXを通じて生活出来ています。その経験やノウハウ、自分の意見を話せる場所が大事ですし、子ども達の成長が見られるスクールはとても楽しいですね。
小松のスクールは、当初は3人からスタート。今では、下は4歳から、20~30人が集まるようになりました。ここでは技を教えることではなく、コミュニティを作ることを大切にしています。小さい子どもたちも混ざって、みんなで楽しい事を共有してもらうような感じです。子どもたちが楽しそうにしていると、自分の気持ちにもドライブがかかって来ますね。
それと、金沢の21世紀美術館でBMXやストリートカルチャーの世界大会を開催してみたいですね。美術館でやることで、僕たちのやっていることがアートとして見てもらえる気がしていて、新しい意味が出てくると思っています。
森:今度館長さんをご紹介しますね(笑)。というのも、YORKさんは「話す言葉の用意のある人」だと思います。自分の世界が大事だからこそ、ベラベラ話さず、話す相手を選んで言葉を紡いでいく人なんじゃないかな。とても慎重で、自分を探求していて、とても信頼出来る方だなと感じます。だからこそ、サポートしたいと思わされる。
僕は、そんな人がたくさん出て来て欲しいと思っています。カルチャーって、ネットワークを持つことでアクティビティが増え、どんどんクリエイティブになっていくんです。そこで面白さがスパークして、もっともっと、新しく面白いモノになる。そういうところには、アーツカウンシル東京も関わっていきたいですね。
YORK:みなさんも悩んだら、まずは自分に聞いてみて下さい。僕の好きな言葉で「カガミ(鏡)からガ(我)をとり、我、カミ(神)なり」という言葉があります(註:自我意識を取り除き、本来の自分自身と向き合うことを指す神道由来の言葉)。何をしたいか、どうしたいかは、自分が一番知っているはずです。