2012.09.10
今年、BBOYにとって最大の栄誉の一つ、BATTLE OF THE YEAR(BOTY)の日本予選を制し、ワールドファイナル(11月17日、フランス)に向けた準備を進めるTHE FLOORRIORZ。その最強集団を最年長メンバーとしてまとめ、かつ郁文館夢学園中学校・高校(東京都文京区)で現役の保健体育科教員も務めるBBOY WATA。
自身も、今年のRED BULL BC ONE TOKYO CYPHERにてベスト4という結果を残すなど、たゆまぬ追求を続けています。
今回は、11月のフランスを前にして、RAW SKOOLがインタビュー。教員としても、最前線のBBOYとしても活躍する氏に、両立について、次世代について、様々な思いを伺いました。
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―現役の教員と最前線のトップBBOY、二足のわらじを両立させている大変さについて聞かせて下さい。
一番大きいのは時間です。とにかく時間を上手く使って生み出さないといけない。朝まで練習して、朝から仕事に行かなくちゃいけない。これはかなり体力的にはきついです(笑)。けど、THE FLOORRIORZの仲間は本当に賭けて練習しているし、自分はメンバーの皆に引っ張ってもらって何とかやれている感じです。BOTY JAPAN前などは本当に大変でした。
今は週2でチーム練を含めて、だいたい週4日くらい練習している感じです。1日やって、1日休んで。
けれども、それで自分が学校に行って、子どもたちに接していると色んなパワーをもらえるんで、それがエネルギー源だったりします。チームで学んだことを学校で還元したり、その逆だったり。自分が学んだことをチームでも学校でも還元出来るのがいいバランスを生んでいるような感じです。
チームとか、家族とか、学校の生徒とか、いろんなものにちょっとずつ支えてもらって出来ています。自分のためだけじゃ、もう出来ていないかもしれないです(笑)。
―BBOY WATAを最も突き動かしているモチベーションの原点は何ですか。
今までしてきた経験がすべてモチベーションかな、と思います。悪く言えばそれにすがっていると言えるかもしれないけど、長く続けて、良い経験をたくさんしてきて、続けていけば色んなことが実を結ぶということを自分で知っているから、それをもっと知ってもらいたいとか。だから最近レッスンも始めましたし、それは動きを教えるというよりは、人と出会うことだったり、自分の経験をシェアして戻してあげているような。
たとえば、2006年のBBOY SUMMITがすごく衝撃的で。特に7GEMSのKEN SWIFT達のショーの説得力がすごくて、すごく喰らって泣きそうになってて、そしたら隣にいたLAMAROC(FRESH SOX)はもう泣いてて(笑)。その時にスタイルだったり、考え方がすごく変わって。言葉では言い表せないんですけど。それでそれ以来、自分のダンスに対する周りの反応も変わって、結果もついてきて、続けているとこういうことがあるんだな、と。
そういう、自分が続けてきて経験してきたことを還元したいというか、勿論THE FLOORRIORZのメンバーは自分よりも経験を積んでいるメンバーもいるんですけど、皆で反応が起きて、というのをやりたい。それはやっぱり人ありきで、アメリカで泊めてもらったやつとか、もう言ったら全部なんですけど、出会いとかも含めて、そういうところかなぁ、と。もう、人ありきです、本当に(笑)。
―ダンスを辞めようと思ったことはあるんですか。
全然ありますよ。とりあえず結婚してから1年くらいしたら止めようかなって。でも、BBOY SUMMITの後少ししてからNORI(THE FLOORRIORZ)と一緒にバトルに出るようになって、遠征もして、結果も出て、何かイイ感じに乗ってきちゃって(笑)。2007年くらいですね。だから、今あるのはKATSU君(STYLE VALE-TUDO/FRESH SOX/ALL AREA)やNORIのおかげです。
でも、奥さんには夜いないって文句言われるし、大変です(笑)。もうでも、今こうやって出来ているのは奥さんの理解があってこそですけども。いま仕事で教員をやっているから、それでチャラというか、奥さんも親も理解してくれている、というところはあると思います。
―ダンサーとして一線にいながら教員もやっている、というのは、勿論ご自身の努力あってこそですが、他のダンサーからすると一番カッコイイというか、みんな羨ましいところだと思います。
いま授業でダンスが取り入れられたって騒がれていますけど、別にHIP-HOPをやらなきゃいけないわけじゃないし、誰が教えてもいいんですね。コンテンポラリーっぽい感じだったり。だから逆に言うとそれは難しいんです。色々毎回考えながらやらないといけないし、みなさんが思ってるほど、学校でやるダンスっていうのはHIP-HOP感っていうのが求められていないんです。
本当はダンスを通じて、さっき言った自分が得てきた経験とかを喋りたいんですけど、やらなきゃいけないこともあるし、成績をつけないといけないとなると、あまり時間を取れず、動きだけを教えて終わっちゃいます。教育課程にはそういう部分は一切書いていないですし。一応仕事でダンスっていうつながりはあるので、そこは恵まれているのかもしれないですけど。
個人的には、仕事があって、安定あってのダンスかな、と。ダンスだけでやっていくのは甘くないし。自分はまだギリギリ動けるから、とりあえずあと1〜2年はやりきって、それで得た経験を仕事で還元したいな、というのが理想です。そういう意味では恵まれてるのかな。
けど、毎日は練習できないし、周りのメンバーがどんどん上がっていって、TAISUKEなんかはどんどん進化してますし、大変ですよ(笑)。毎日のように凹んでいます。もう、自分がいままでやってきたことしか頼るところがないです。
結局プレイヤーとしては、THE FLOORRIORZの中では僕が一番早く限界がくるし、理想としては、今のままもう少し頑張って、教員として、それで得た経験をいろいろな学校で講演のように話したり、そんな位置づけの人がいてもいいんじゃないかなって思ってます。だから、BOTY FINALは本当に取りたい。取らないと意味がないですね。
―プレイヤーとして、教員として、若い世代に伝えたいことは何ですか。
とにかく、海外に行ってみて欲しいというのはあります。とにかく海外っていうのは非日常だし、刺激に満ちあふれています。さっき言ったように、自分も海外で一番影響を受けましたし、大会に出るでも観るでも、若いうちに行ったほうがいいと思います。
あとは継続することと、仲間を一番大事にすれば、何か困っても仲間が助けてくれるってことかな。これはホントに、ダンス以外でも、何かを継続して、さらに仲間がいれば、何か起きても大丈夫かなぁ、と。結局そこかなって。気づいたら10年以上続けていることって、そんなに無いじゃないですか。ダンスじゃなくても。そこで得る経験が一番なのかなぁって。海外行くのも、そこでめっちゃいい景色を見て、添乗員になりたい、とか、何でもいいと思うんです。そこにプラスでダンスがある感じでいいんじゃないかなぁって思っています。
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<BBOY WATA プロフィール>
“BBOY”としてのストレートなスタンスを常に貫き、唯一無二のフロウとスキルの融合を見せるベテランBBOY。
TOPROCK, UPROCK, FLOOR, FREEZEとバランス良く、かつトリッキーなフロウを音楽の中で自在に操る。
コンペティションでもサイファーでも頭一つ抜けるその存在感は、多くのBBOYたちからリスペクトを受けている。
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こんなカッコイイ先生、他にいない!と断言できるWATAのカッコよさ。
ストレートな熱い思いに心打たれました。
あらゆるダンサーやプレイヤーの模範となる存在に違いありません。
これからも、THE FLOORRIORZとBBOY WATAから目が離せません!
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