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「外の世界と会話する『言葉』を持とう」(アーツカウンシル東京 森司さん)|TWDW2015×ARTIPENDENT Vol.2 一日目「ストリートと働き方〜ビジネスプロデューサーこそを育てる!」レポート

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昨年8月30日〜31日にVol.1を実施し、同じく11月20日と24日にTWDW2015とのコラボでVol.2が実施された「新時代のTOKYOストリート・サミット」ARTIPENDENT。会場はVol.1同様、東京・渋谷にあるRed Bull Studios Tokyo Hallで、2日間で約50名の参加者を集め、行われました。

今回は、そのVol.2 一日目のセッションのレポートをお届けします。

Vol.2 一日目は、「ストリートと働き方〜ビジネスプロデューサーこそを育てる!」をテーマに、東京の芸術文化施策の中核的な役割を担い、東京2020オリンピック・パラリンピックの文化プログラムに向けたプロジェクトも実施しているアーツカウンシル東京から、プロジェクトディレクターの森司さんがゲスト。ストリートに必要な人材像とその育成について、アツ~いトークを繰り広げました。

同じくVol.2 二日目のレポートも近日中にUP予定なので、是非チェックしてくださいネ。
→Vol.2 二日目「ストリートカルチャーとまちづくり」対談、アップしました!!(2016/01/23)


アーツカウンシル東京とは

阿部(RAW SKOOL):今日は文化発展やストリートに必要な人材像とその育成がテーマです。まずは森さんが所属するアーツカウンシル東京さんの役割や行政との関わり方について教えてください。

森(アーツカウンシル東京):公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京は、都が立案した文化政策に基づき、実際に現場でオペレーションを行う団体の一つです。簡単に言うと、東京都の文化執行部隊ですね。オペレーションだけではなく、いくつかオリジナルイベントをプランニングし実施しています。

阿部:アーツカウンシル東京さんが行っているプロジェクトで、我々ストリートに近いものをいくつかピックアップさせて頂きました。「東京アートポイント計画」「Shibuya StreetDance Week」「Tokyo Art Research Lab」について簡単にご説明頂けますか。この3つはストリートカルチャーにも関連が深いように感じます。

森:「東京アートポイント計画」では、NPO団体がアーティストの活動を支えているケースが多いことに目を向けて、アーティストを支えるNPO団体が持続して活動が出来るように、一緒にプロジェクトを実施しながら資金的なサポートやアドバイスを行っています。アーティストだけですと、「やれること」と「やれないこと」が限られてくるので、アーティストを支えるNPOを育てることでより長く、大きく活動出来るのです。現在では15のNPOと関わっています。
Shibuya StreetDance Week」は、今年から始まった新しいプロジェクトで、パルコ、国際交流基金アジアセンターと共に主催しています。各主催がマンパワーと資金と時間を共有して、新しく始めたプロジェクトですね。
最後に「Tokyo Art Research Lab」。文化関連の事業に関わっている人って本当に少なくて、「やりたい人」は多いんですが、「やってくれる人」が少ないんです。その「やってくれる人」、実施力のある人材の育成をしています。育成プログラムの他に、テキスト(教本)の作成、ドキュメントを残す為のデジタルツールのシステム開発などをやっています。


「頑張り過ぎないことが、文化の発展につながる」

阿部:アーツカウンシル東京は、縦軸はNPOから民間企業、行政まで、横軸は伝統ある歌舞伎から最新のストリートカルチャーまで幅広く関わっていますが、文化が発展する際の課題についてはどのようにお考えですか。

森:少し荒っぽい言い方になりますが、「数」が必要です。つまり、「やっている人」「関わっている人」を増やすことですね。
瀬戸内の直島が一つの良い例ですが、元々アートに関係のなかった島がアートに関わって10年。その間にアートが産業化し、関わる人が増えることで、続けていく気運が醸成され、多くの人が外からやって来る。そんなことが、文化発展の一つの例だと思います。

阿部:おそらく会場のみなさんが聞きたいことをお聞きします。直島はベネッセの資金があり立ち上がった例ですが、プロジェクトを始める際に、「資金」を確保してからプロジェクトを始める方が良いか、「プロジェクト」を先に走らせ、後から資金繰りをする方が良いか。どう思いますか。

森:その悩みは消えないですね(笑)。一つの考え方として、「持続性は、低め安定にあり」と考えています。「大きくなる事」を捨て、自分達で出来る範囲内で、クオリティも頑張り過ぎない。それは実際、悪いことではないと思っています。何年かすると、ノウハウが身につき、今まで以上のスピードで仕事が出来るようになり、無理もしていないので楽しいと思う事を長くやれるんですよね。
この持続性が結局、右肩上がりの産業を育てることになりますし、持続していると従事する人が増え、出会いが増えると次に選択肢が増えます。発展には、「数」の他に「多様性(チョイス・選択の自由度)」が必要になるので、この考え方は一つの方法だと思います。

阿部:文化発展に必要なチームアップ、人材についてはどうお考えですか。

森:発展には、まずチーム作りが大事だと思います。僕が考える理想は「医療チーム」ですね。病院という大きな箱があり、医師・看護士・技士というそれぞれプロフェッショナルな専門分野があり、緊急時にはプロフェッショナルが集まり共同で作業をして、終わると各自が専門分野に戻ることが出来る。チーム編成だけでなく、各専門分野には、教育機関がしっかり有り、多くの人が従事出来るシステムと環境が出来上がっている。この環境をアートやストリートの現場で作ることが出来れば、文化として大きく発展できると思っています。

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「寺子屋的な相互教育・共有の場が必要」

阿部:今日はその人材育成がメインテーマです。すこし、海外のちょっと面白い教育システムの話をさせて頂きます。
一つは、2013年にドクター・ドレーとジミー・アイオヴァインが南カリフォルニア大学(USC)に7000万ドル(当時のレートで約70億円)を寄付し、新しい学部を作りました。そこでは、一流アーティストを育てるのはもちろんですが、テクノロジーの勉強、コミュニケーションデバイスの理解、ビジネスモデルを作る訓練等、ユニークなカリキュラムがあり、音楽産業全体を支えるべく、幅広い人材の育成を目指しています。
二つ目は、1991年に英国レコード産業協会が開校した、イギリスのBRIT(ブリット)スクールです。これは授業料無料のアートの専門学校で、14歳から19歳までの学生が音楽、ダンス、演劇、ミュージカルのパフォーマーとしての訓練、あるいは制作、メディア、デザインなどのコースもあるそうです。卒業生には、アデル、エイミー・ワインハウス、レオナ・ルイスなど世界の一流アーティストの他、メディアのスペシャリストや、テクノロジーを通じてエンジニアとして音楽やアートの産業で活躍している人も多数輩出しています。
こうした、パフォーマーだけでなく、芸術産業全体を支えるべく設計された教育システムは、日本にはあるのでしょうか。

森:個人的に知る限りですが、無いですねぇ(笑)。日本では教育がビジネスと考えられている傾向があって、教育システムにお金をかけない傾向にあるように思います。例えば、授業料は高いのに、海外のように内容の新鮮さや、ユニークさが無いものなど。ただ、日本には「寺子屋」という文化があります。エッジの効いた仲間が集まり、悩みや意見を交換しあう、まさにこの「ARTIPENDENT」のような場所が必要だと思います。

阿部:まだまだ、ストリートは社会や企業、行政との距離を感じます。だからこそ、「翻訳家」が必要だと思いますし、社会・企業・行政に届きやすい言葉を使い、ギャップを埋めるというチューニングが必要ですね。


「わかりやすく伝える『言葉』を持とう」

森:おっしゃる通りです。チューニングが必要なのは、伝える側にも上手く伝えられる人がいないし、受け取る側にも受け取れる人がいないことがあるからです。ですから僕は、アーティストの方々には「言葉を持とう」という話を常々しています
アーティストの皆さんは、絶対的に好きなことをやっていますので、何をやるかは問題ではない。それよりも、好きなことを「具体的」な言葉にしつつ、同時に「抽象的」に話をするビジネススキルが必要だと思います。
例えば、好きなことについての「なにを、なぜ、どのように、どこで、どれくらいの規模で、将来はどういうふうに」を、きちんと分かりやすい「言葉」と「数字」で人に伝えるスキル。複雑で分かりにくいことを、小学生にでも伝わる最も分かりやすい表現で伝えるスキルですね。
先ほど寺子屋の話をしましたが、仲間内ですと共通言語で簡単に理解出来たり、共通の悩みを持っているのでお互いの理解が出来ますが、外部の人はそう上手くいきません。そこが、特に若いアーティストの課題ですし、外部とコミュニケーション出来る人が多くないと思います。外部とのコミュニケーションのための「自分を語れる、かつ伝わる、明確な言葉」を磨いて欲しいですね。

阿部:みんな、言葉も含めて、発信の仕方が苦手なのかもしれませんね。

森:情報を出すことが大事ですから。「もてなし」が大事で、「もてなし」には言葉が必須です。チャンネルを作ろう、ということ。常にトライ&エラーですし、ゲリラ戦で試行錯誤して、紡いでいって、(初めから)作る時期はみんなで作らなければいけない。いじけたら負けです。気づかせるまで。「認めてもらいたい」ではなく、「認めてもらう」まで。文化の場合は特に、前のめりでないと気がつかないものなんです。

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