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フェイスブックが多数のアーティストを”雇い”、オフィスで自由にウォールアートを描かせる「Artists-in-Residence Program」、その理由とは?

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Mural by Jet Martinez, Facebook Headquarters, Menlo Park, Calif, Nov. 11, 2014. ©Peter Mccollough/Wired

Mural by Jet Martinez, Facebook Headquarters, Menlo Park, Calif, Nov. 11, 2014. ©Peter Mccollough/WIRED

今やアメリカを代表する企業に成長したフェイスブック。創業者のマーク・ザッカーバーグや映画「ソーシャル・ネットワーク」などで、会社としての存在感もまさに時代の先端を行っている企業のひとつです。

そんなフェイスブックが、実はオフィスの中にアーティストを多数雇い入れる「Artists-in-Residence」プログラムを公式に実施していることをご存知でしたか?

今回はそんなフェイスブックの取り組みを、米WIREDの記事より、ご紹介します!

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ドリュー・ベネット(Drew Bennett)が公園で友人たちとくつろいでいたある週末、彼の電話が鳴った。主は、マーク・ザッカーバーグ。その日の午後に、(ベネットの)スタジオに行く、という旨の電話だった。

ベネットは自転車に乗って、サンフランシスコ湾に近いドッグパッチ(Dogpatch)へとペダルを漕いだ。ザッカーバーグが訪れることは突然だったけれど、ベネットは少しばかり時間があったので、彼の作品をスタジオの壁にかけてみたりした。

ザッカーバーグは到着すると、このフェイスブック社の創立者でありCEOの男はスタジオの中央にあるイスに腰掛け、こう訊いた。

で、いま僕が見ているものは何だろうね?

ザッカーバーグはベネットの答えを気に入ったに違いない―団結する人々を表現しているコレクションであるという説明を。フェイスブックはまもなく、サンフランシスコのすぐ南、パロ・アルトにあるオフィスの装飾をしてもらうためにベネットを雇い入れることになるわけだが、そこでベネットは4ヶ月もの間、「毎晩、徹夜で」フェイスブック社内に壁画を制作し続けることになる。2007年のことだった。

ベネットはフェイスブックの社屋をカンバスとした最初のアーティストでもなく、最後のアーティストでもない。グラフィティ・アーティストのデイヴィッド・チョー(David Choe)は、後に彼を億万長者にするフェイスブック株との交換条件で初代オフィスに作品を残しているし、その他数多くのアーティストが社屋拡張のたびに作品を制作してきたのだ。

ただ、ベネットは壁画をペイントするにとどまらなかった。ベネットの幼なじみで、フェイスブックのチーフ・プロダクト・オフィサーであるクリス・チョーックス(Chris Cox)は、5年後フェイスブックに戻ると、現在のフェイスブック社オフィスでの「アーティスト招聘制度(artist-in-residence program」を正式に立ち上げたのである。カリフォルニアのメンロ・パーク(Menlo Park)にある巨大なオフィスだ。

常時、少なくとも1人のアーティストが会社の中に常駐し(多い時は3名)、壁やドア周り、吹き抜けや天井などにアートをクリエイトした。

「多種多様なビジュアルどうしの対話は、いかなるビジュアルが単体で存在するよりも、本質的にずっと面白いんだ」とベネットは語る。

A wall of posters made in Facebook's Analog Research Lab, Menlo Park, Calif., Nov. 11, 2014. ©Peter Mccollough/Wired

A wall of posters made in Facebook’s Analog Research Lab, Menlo Park, Calif., Nov. 11, 2014. ©Peter Mccollough/WIRED

PHPのコードや「ハッカー式」と同じく、アートはフェイスブックのカルチャーの基礎をなす一部なのだ。アートは単にオフィスの飾り物なだけではなく、フェイスブック自身を定義する存在でもある。「アートが会社の方向性(attitude)を明確にするんだ」とベネットは言う。フェイスブックのトップ・エンジニアたちはこう言うだろう。「フェイスブックは”構築家”(builder)による会社だ」と。エンジニアたちはデスクトップPCやノートPC、スマートフォンの中で”構築”し、その一方で、アーティストたちが物理的な世界で”構築”をする。

「これはコンピューターの中で起きていることの視覚的・物理的な現れなんだ」とベネットは言う。

「一枚の紙に単に描き残すことも出来るけど、自分の周りにこれだけ様々なアーティストのグループを招くってことのほうが、クリエイティブなプロセスのより本来的な表現じゃないかと思うんだ」

コーポレート・アートは新しいものではない。けれども、このフェイスブックの例は他とは異なる。フェイスブック・アートは「制作中のものだけをサポートする」というベネットの言葉どおり、全てが委託だ。JPモルガンが言うには、「単に”見つける”アートよりも、ずっと”生きている”」ものなのだ。そしてこれらのアートは必ずしも投資でもない。チョーの作品のいくつかが別のオフィスに移されたりはしているものの、作品のほとんど全てが物理的にオフィスの一部分となっているがために、動かすことも、単体で売りに出すことも難しい。フェイスブックのアートは何よりも会社の”バイブス”(Vibe)に他ならないのだ。

フェイスブックの初代オフィスにあるチョーの壁画は、「キング・オブ・アグレッシブ」(ベネット)と言われる。ある作品はほとんど裸の女性が牙のある獣にまたがっているものだが、この作品は最近ケーブルテレビで放送されたシリコンバレーのパロディ番組で風刺されたりもした。2012年に現在のオフィスに壁画を制作したジェット・マルティネスによれば、このような”何でもあり”の姿勢は、フェイスブックが進化しようとも、一貫してきたのだという。

マルティネスはアート・コンサルタントのダニエル・ウォールを通じてフェイスブックにやってきた。「ウォールはフェイスブックに務める人間全員と個人的な交流を持っていた」とマルティネスは振り返る。そして2012年、彼は17号棟に巨大な花のブーケをペイントするために$4,000の報酬を得た。フェイスブックのアート・シーンは、”ワイルド・ウエスト”(wild west、西部開拓のイケイケ精神)みたいなものだと、彼は言う。ある朝会社に来ると、チョーと他のアーティストたちがホールを走り回りながら壁から壁へと線を描き、”ビルをぶっ壊していた”のだとか。「誰も責任なんて取らないし、取りたくないね」とマルティネスは言う。

A Facebook lobby mural by artist David Choe, Menlo Park, Calif., Nov. 11, 2014. ©Peter Mccollough/Wired

A Facebook lobby mural by artist David Choe, Menlo Park, Calif., Nov. 11, 2014. ©Peter Mccollough/WIRED

それ以来、ベネットはフェイスブックのアート活動をより公式に、かつ定期的にオーガナイズするようにしてきた―フェイスブックのより成熟した姿の鏡として。アーティストたちは株式ではなく、作品の権利と引き換えに相場の謝礼を受け取っている。大金を得るためにこのメンロ・パークに居るのではないのだ。アーティストたちは4週間から16週間の間作品を制作し、他の社員と同様の待遇を受け、またアナログ・リサーチ・ラボ(Analog Research Labと呼ばれるスタジオで多少の時間を過ごすことが求められている。このスタジオはベン・バリーとエヴァレット・カティグバックという2名によって設立されたシルクスクリーンのスタジオで、社内の壁に並ぶポスターや印刷物をクリエイトする場所だ。「アーティストは皆、同僚として雇われるのさ」とベネットは言う。

ただし、アーティストたちは自分たちが制作したいものや描きたいものは自由に認められる。マルティネスの妻、ケリー・オーディンもこのアーティスト招聘制度に参加した一人だが、メンロ・パークのオフィスにシリーズものの壁画を制作している。彼女はこの作品に進捗歩合で$10,000の報酬を得ているが、この金額が魅力的だったからというわけではないと語る。フェイスブックの名のもとに作品がより世の中に知られ、作品そのものも残るのだ。”実験的”といいうこのプロジェクトは、あらゆる面であるスペースを完全に変形させるデザインなのだが、やりたいところでやらせてもらうことが出来た。「フェイスブックはリスクを取ることをどんどん後押ししてくれるの」とオーディンは言う。

先ほど触れたシリコンバレーのパロディ番組では、このような活動は他のスタート・アップの世界でも試金石になっている。「他の会社のオフィスに行くと、やつらがフェイスブックのパッケージをまるごと買っているよ。軽食バーやキックスクーター、壁画がセットでね」とマルティネスは言うが、フェイスブックは他よりもずっと進んでいるのだ。

アラン・バンバーガーはartbusiness.comというサイトでサンフランシスコ・ベイエリアのアート・ビジネスを記録しているが、ベネットがこのプロジェクトである特別なものを抱き続けていると指摘する。

「これほどまでに考えが突出している人は(ベネットの他に)見たことがない。フェイスブックという会社をアートの研究所のように使っているんだ」

そしてベネットとフェイスブックは、ニューヨークとダブリン、2つの新しいオフィスに同じ考えを持ち込んだ。「ニューヨークでは、ちょっとだけアーバンかな」とベネットはいうが、基本的な”ノリ”(Vibe)は同じだ。

その”ノリ”は、誰をも包み込む。(メンロ・パークからニューヨークオフィスまでの写真をみてほしい)建物の中でも外でも、ホールでも共有スペースでもキッチンでも、ほとんど全ての場面でアートに囲まれる。数えきれないほどの壁画に留まらず、バーバラ・ホルムスによるDNAのような再利用木材のスパイラル・アートなどのインスタレーションも含まれ、印刷物やポスターで他の壁面も埋め尽くされている。これらのアートはまた、次のようなフェイスブックの社訓の拡声器となっているのだ。

“運は冒険者を好む(Fortune Favors the Bold)”

“すぐ行動せよ、構築せよ(Move Fast and Build Things)”

“フェイスブックで起きるコトは、他の誰にも関係のないコトだ(Nothing At Facebook Is Somebody Else’s Problem)”

“恐れないとしたら、何をするか?(What Would You Do If You Weren’t Afraid?)”

ベネットは言う。

「会社が自分たちのスペースを所有するということに対して、ユニークなやり方を実践しているんだ。あの日、同じスピリットでザッカーバーグがチョーを讃えたように、今日もそうであり続けるのです。」

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元記事:The Amazing Murals Created by Facebook’s Artists-in-Residence(wired.com)

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